アセクシュアルの当事者発信は広がってきている。東京・町田市議会議員の東友美(ひがしともみ)さん(34)も声を上げた一人だ。町田市議会の9月定例会で、アセクシュアルであることを公表した。

「市にはLGBTの支援が何もないんです。だから相談窓口を作ってほしいと思い、議会で訴えてきました」と話す。自身も性的少数者の当事者だと公表することで、強い意志で問題に取り組んでいくという表明でもあった。

「アセクシュアルという言葉を知ることで、悩んでいる人に、自分一人じゃないことも知ってほしかった」(東さん)

 東さんが違和感を覚えたのは高校生のとき。周囲の恋愛トークについていけなかった。「人並み」になりたいと男性と付き合ってみたが、うまくいかない。

「この“欠落”も自分の個性」と受け止めて生きてきたが、性的少数者の支援活動をする原ミナ汰さんから、「それは欠落でも何でもない」と言われた。

「うれしいと同時に、すっきりしました。これでいいんだと思えたんです」

 アセクシュアルを公表してから、SNSなどには「あなたのような人間が日本を壊す」と否定的なコメントもあったが、「これから理解していきます」「私もそうです」といった言葉も多く寄せられたという。

「当事者もそうでない人も、知る機会があれば変わっていくことがあると思うんです」

 東さんはそう期待をする。なかけんさんも思いは同じだ。

「アセクシュアルである自分を受け入れることで、自分の生き方を大事にしたいと思えた。知ることで救われる人もたくさんいると思うから、まずは知ってほしい」

(編集部・大川恵実)

AERA 2018年12月10日号