片山:改憲して「日本の誇りを取り戻す」という論理も意味不明です。私なりに翻訳すれば、社会福祉が崩壊して賃金も上がらなくても、日本人は誇り高き民族だから、この状況に耐えて頑張りましょうということです。
荻上:憲法を理解するためにも、国連憲章はもう一度読み返してほしい。国際連盟が「戦争の抑止」に注力していたのに対し、国連憲章は戦争を引き起こすような対立、民族紛争、差別や貧困など「負の環境」に対しても積極的に対応していく姿勢がみえる。日本国憲法は国連憲章が目指す世界の実証実験、オプションとして作られた側面もあると思っています。国連ができても冷戦、パレスチナ問題、ベトナム戦争などさまざまな問題が噴出しました。国連はそれでも人権委員会などを作り、一歩ずつ歩みを前に進めようとしてきた。そこで、国連憲章の「オプション」でもある日本国憲法はどう機能してきたのかを振り返ってみる。改憲をするのなら、戦後70年間の歩みと反省をどう生かせるのかを前文から考える。改憲をしないならば、国連憲章の理念を今の制約の中でどう実現できるのかを提案する。そうした議論に発展していくのが理想だと思います。
片山:荻上さんらしくポジティブです。私も絶望はほどほどにします(笑)。
(構成/編集部・作田裕史)
※AERA 2018年12月10日号