沖縄県知事選でのファクトチェックの成果などを報告したFIJ主催のセミナー/10月27日、東京都内で(撮影/品田裕美)
沖縄県知事選でのファクトチェックの成果などを報告したFIJ主催のセミナー/10月27日、東京都内で(撮影/品田裕美)
FIJが公表した沖縄県知事選の主なファクトチェック(AERA 2018年12月3日号より)
FIJが公表した沖縄県知事選の主なファクトチェック(AERA 2018年12月3日号より)

 ネットの個人サイトやSNSの普及に伴うフェイク情報の拡散は、民主主義の根幹である選挙にも影響を及ぼしかねない状況を招いている。憲法改正の国民投票を見据えた議論も必要だ。

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「ファクトチェックの重要な役割は、どんな立場に立つ人も共有できる事実を確認し、必要以上に対立や分断をあおる社会をつくらないことです」

 10月27日に都内で開かれた、NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)主催のセミナーで、事務局長の楊井人文(やないひとふみ)弁護士(38)はこう訴えた。

 FIJは、国内の注目選挙に合わせて市民やメディアを募り、集中的に真偽検証する「ファクトチェック・プロジェクト」を展開している。

 9月30日投開票の沖縄県知事選では、個人登録した26人のほか、沖縄の地元紙やネットのニュースサイトなど6メディアがプロジェクトに参加した。

 このうち、FIJが独自のガイドラインに基づき、9月1日~10月3日、特集サイトで公開した記事は計13本。内訳は「誤り/偽情報/不正確」7件、「根拠不明」1件、「一部誤り」1件、「ミスリード」2件、「ほぼ事実/おおむね正確」4件、「事実/正確」6件だった(1本の記事で複数の言説を検証・判定したものもあるため計21件)=表を参照。

 目につくのがネットやSNSの言説だ。9月15日にラスト公演をした歌手の安室奈美恵さんが玉城デニー候補への支持を表明したかのように印象づける画像投稿や、自民党幹部が安室さんに会って発言自粛を求めたといった根拠不明情報に基づく報道もあった。現職の国会議員や元首相らが発信したツイッターの投稿も真偽検証の対象になった。楊井さんは言う。

「沖縄の主要地元紙が選挙中にファクトチェックを実行し、選挙期間中に随時記事化したことは大きな前進でした」

 選挙中のファクトチェック報道は、「選挙の公平性」を重視する国内メディアでは一般化していないのが実情だ。これは、国際社会の潮流と逆だと楊井さんは指摘する。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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