解放の翌日、入国管理施設で通訳のトルコ人から「好きな歌があれば聴かせてやるよ」と声をかけられた。安田さんがリクエストしたのは、もちろんこの曲。スマホから流れる歌に、涙が頬を伝った。

 拘束中に一度だけ、深結さんの写真を見ることができた。17年2月ごろ、安田さんは融通の利きそうな見張り役の一人に、スマホで深結さんのフェイスブックを見せてくれるよう頼んだ。画面に映し出された深結さんの表情を目に焼き付けた。

「久しぶりに顔が見られたうれしさよりも、むしろつらくなりました」

 自分が世間を騒がせたことで、日本でつらい目に遭っているのではないか。深結さんが長年培ってきた人間関係を失ってしまったのではないか。そう考え、居たたまれなくなったという。

 帰国直前、トルコのイスタンブールで外務省の担当者が、日本の深結さんに電話をつないでくれた。

「もしもし、俺だけど。やっと帰されたよ」

「よかったねぇ」

「大変だっただろうけど、大丈夫だったか。友だちがいなくなったんじゃないか?」

 まず深結さん自身のことと、友人関係を心配した安田さんに、深結さんは答えた。

「むしろ友だちは増えたよ。みんなに良くしてもらってる」

 この言葉に安田さんは救われたという。

「逆境に強いタイプだとは思っていたけど、彼女は想像以上に土壇場に強い人でした。彼女が結婚相手で、本当に良かったなぁって思います」

(聞き手/編集部・渡辺豪)

※AERA 2018年11月19日号より抜粋