永久メイ(ながひさ・めい)/2000年、兵庫県生まれ。中学1年で親元を離れ、モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミーに留学し、17年、最優秀卒業生で卒業。18年5月、マリインスキー・バレエの正式団員に(撮影/写真部・片山菜緒子)
永久メイ(ながひさ・めい)/2000年、兵庫県生まれ。中学1年で親元を離れ、モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミーに留学し、17年、最優秀卒業生で卒業。18年5月、マリインスキー・バレエの正式団員に(撮影/写真部・片山菜緒子)
「海賊」でオダリスクを踊る永久メイ/マリインスキー・バレエ東京公演は11月28、29日、12月2、3日、5~9日、いずれも東京文化会館で。詳細はジャパン・アーツ(写真/Natasha Razina)
「海賊」でオダリスクを踊る永久メイ/マリインスキー・バレエ東京公演は11月28、29日、12月2、3日、5~9日、いずれも東京文化会館で。詳細はジャパン・アーツ(写真/Natasha Razina)

 ロシアが世界に誇るマリインスキー・バレエに入団した「バレエ界のシンデレラ」。同団3年ぶりの来日公演で本格的に母国デビューする18歳に聞いた。

【「海賊」でオダリスクを踊る永久メイの写真はこちら】

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 ボストン・バレエの倉永美沙、英国ロイヤルバレエ団の高田茜、パリ・オペラ座バレエ団のオニール八菜と、世界の名門バレエ団で主役を踊る日本人ダンサーは、今や枚挙にいとまがない。

 それでもロシアの超名門、マリインスキー・バレエは18世紀の創立以来、ダンサーにとってひときわハードルの高いバレエ団として知られる。

 そのマリインスキーに今年5月、日本人2人目として入団を果たしたのが、弱冠18歳の永久メイだ。

 同団入団は付属の名門学校、ワガノワ・バレエ・アカデミーから、毎年数人にだけ許される狭き門。モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミー出身の永久は「外様」の壁を破り、しかもコール・ド(群舞)を飛ばしてセカンドソリストと、異例ずくめの抜擢(ばってき)となった。

「夢のまた夢のような話で、今でも信じられません」

 瞳を輝かせ、身ぶり手ぶりで話をする。そのしなやかな全身から喜びが伝わってくる。

 入団のきっかけは3年前にアメリカで開催されたワークショップ。どんなに難しいステップでも、楽しそうに踊る永久の様子に、マリインスキーの舞踊監督、ユーリー・ファテーエフが目を留めた。

 2008年に監督に就任したファテーエフは、閉鎖的だったマリインスキーに多様性を取り入れ、韓国からキミン・キム、英国からザンダー・パリッシュを入団させた。13年には、ワガノワアカデミー出身の石井久美子が、やはりファテーエフに見いだされて、日本人で初めて正式入団を果たしている。

永久が学んだモナコの学校は少数精鋭ながら、家族的な雰囲気で、生徒同士も和気あいあいとしていた。しかし、マリインスキーは永久に言わせると「一匹狼の集まり」。

「ものすごく短いリハーサル時間で、次々と本番が来ます。そんな環境の中で、みんな自分に集中して生きている。シビアですが、ひとり黙々と取り組むことは、私に向いています」

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