従来、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症は原因が異なると考えられていた。が、愛媛大学大学院医学系研究科(分子心血管生物・薬理学)の堀内正嗣教授は「もうこの2種類の境はなくなってきました」と言う。アルツハイマー型認知症の患者の解剖結果からも、血管の病変が認められるなど知見が積み重なってきているからだ。

 このため、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の阿部康二教授(脳神経内科学)は「近年、認知症(特にアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症)は脳だけの病気ではなく、全身の血管にできる動脈硬化と深い関わりがあると明らかになっています」と説明する。

 動脈硬化とは、血液中にLDL(悪玉)コレステロールや高血糖の原因となるブドウ糖が多くなりすぎて血管壁に付着し、血管が狭くなること。高血圧によって血管の内側が傷つき炎症などが起こりやすくなり、血管が硬くなるとともに、LDLコレステロールやブドウ糖を血管壁に取り込みやすくなって起こる。動脈硬化で血圧はさらに高くなる。

 この動脈硬化が重症化するにつれて、脳内のアミロイドベータの産生が多くなったり、排除しにくくなったりするため、たまりやすくなると考えられている。加えてアミロイドベータの蓄積が、動脈硬化を加速させやすくするという悪循環も研究で明らかになった。

 つまり、認知症も脳卒中や心筋梗塞と同様、生活習慣病予防が重要ということだ。

 実際、同大学病院神経内科認知症外来の調査では、アルツハイマー型認知症患者570人のうち、生活習慣病にもつながるメタボリックシンドロームの診断基準の一つである腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上の人は4割弱、さらに高血圧・脂質異常症・糖尿病のどれかを合併している人は7割を超えていた。(医療ジャーナリスト・福原麻希)

※1 若年性アルツハイマー型認知症は進行がより速い
※2 MMSE(Mini Mental State Examination)時間や場所の認識・注意力・計算力・短期記憶・言葉の理解力・空間認知(距離感等の認識)等を評価する簡単なスクリーニング検査
※3 Barnes DE,Yaffe K,2011

AERA 2018年11月12日号