国谷:本書では、あらゆる機会での対話の重要性も説いています。成功例を語ることで取り組みが広がると。

ポープ:問題や脅威を語るよりも解決策を語ることが必要です。持続可能な開発目標(SDGs)と言っても多くの人は意味が分かりません。気候変動対策と言うよりも、安くて害のないエネルギーと言えば理解を得られます。

――同書では、気候変動対策として食習慣の改善や農業のあり方など、日常生活でもできる解決策も提案している。国家や国際社会に解決策を委ねがちな気候変動問題を、個人レベルの取り組みの積み重ねで対応しようとする発想は、極めて新鮮だ。ただ、不安は残る。国谷氏が最後に聞いた質問が的を射ていた。

国谷:間に合うのでしょうか。

ポープ:全ての犠牲を回避するという意味では間に合いません。もっと早く始められなかった代償を払うことになるでしょう。それでも全てを失わないようにするには、今からでも間に合います。活力があるうちに行動するべきだと、特に若い人たちに言いたいです。彼らはソーシャルメディアを通じて人々とつながることが上手です。人々がつながって変化を起こす。その能力を発揮してもらいたいと思います。

(構成/編集部・山本大輔)

AERA 2018年11月12日号より抜粋