ポープ:政府が取り組みを速めれば、発電にかかるコストはもっと下がります。日本の再生可能エネルギーのコストは、他の国と比べると高いままです。公正な競争が必要です。

――『HOPE』を共著したブルームバーグ氏は同書内で、国のより強いリーダーシップは大歓迎するが、気候変動との闘いは、国次第ではないと強調している。それが委ねられているのは、住民を守り未来への投資を続ける都市、費用を節約し利益を出そうとする企業、再生可能エネルギーを手の届く価格に下げようとし続ける技術、そして健康被害やコミュニティーの汚染を防ぐためにクリーンなエネルギーを求め続ける市民だと主張する。米エネルギー省の報告によると、08年から約8年で風力エネルギーは41%、太陽光は64%、LED照明は94%もコストが下落している。ニューヨーク市長を3期12年務めた経験から、より人々に近い立場の市に、もっと国が自治権限を移譲することができれば、気候変動対策でもより速く成果を出せると書く。

ポープ:責任のある仕事をしてもらうためには、そのための手段を与えることが必要です。権限の共有。市や自治体は、国よりも地元住民に近い立場にあります。自治体に選択肢があるというのは、住民にも選択肢があるということです。何が安価で健康的で環境にもいいのか。住民への情報共有も重要です。こうしたことを自治体ができるように後押しするのが国の役割です。

国谷:本書は、解決策の実例が豊富です。気候変動は対応できる課題だという強いメッセージを発信しています。本当に対応可能でしょうか。

ポープ:多くの人が、気候変動問題はあまりにも巨大だと感じ、尻込みしてしまう。しかし、実際に米国では石炭火力発電所が閉鎖され、再生可能エネルギーの価格が下がり、電気自動車が道路を走りだしました。ブラジルでは交通渋滞と大気汚染を解決するため、専用レーンを走るバス高速輸送システム(BRT)を導入し、南米中に広がりつつあります。中国は昨年、5万台の電気バスを市場に流通させました。あちこちで湧き上がった発想や発明が、成功例となって世界各地に広がっていきます。ただ、雑草を取り除かないと美しい庭ができないのと同じように、国はこうした取り組みを邪魔する仕組みを排除しないといけない。フロリダ州では屋根に太陽光パネルを設置することが違法なのです。これではいけません。

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