昨年の年賀状で、古い友人たちには病気のことをカミングアウトした。高校の同窓会でも話した。次に病気になる人のために少しでも役立ちたい。自分たち夫婦が困ったことを積極的に発信していきたいと思う。

 今は職場復帰を相談中だ。経済的な理由が大きい。大学生の子どももいる。貯金を切り崩しているが、不安がつきまとう。会社は「前例がない」と対応に躊躇するので、今回は取材で本名を明かすことを断念した。

 厚労省の若年性認知症に関する調査(2009年)では発症後、約7割の人が「収入が減少した」と回答した。退職せざるを得ない場合、たちまち経済的に困窮し、生活が苦しくなるだけでなく、住宅ローンや子どもの学費が支払えなくなる。

(医療ジャーナリスト・福原麻希)

AERA 2018年11月12日号より抜粋