“電子廃棄物の墓場”で働く人々を救いたい…34歳日本人の壮大な挑戦 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

“電子廃棄物の墓場”で働く人々を救いたい…34歳日本人の壮大な挑戦

このエントリーをはてなブックマークに追加
山本大輔AERA
「地球は汚染されて彼らはがんになる」と長坂真護さんが問題提起するガーナ・アグボグブロシエの電子廃棄物の違法投棄現場(写真:長坂さん提供)

「地球は汚染されて彼らはがんになる」と長坂真護さんが問題提起するガーナ・アグボグブロシエの電子廃棄物の違法投棄現場(写真:長坂さん提供)

「ガーナの子」/違法廃棄物を使い、現地の地面を表現した。中央部は水たまりに映る現地の子をイメージ(写真:長坂さん提供)

「ガーナの子」/違法廃棄物を使い、現地の地面を表現した。中央部は水たまりに映る現地の子をイメージ(写真:長坂さん提供)

「ガーナの国旗」/国旗とスラム街の大地を表現した。長坂作品はどれも強烈なメッセージを発信している(写真:長坂さん提供)

「ガーナの国旗」/国旗とスラム街の大地を表現した。長坂作品はどれも強烈なメッセージを発信している(写真:長坂さん提供)

「エレクトロニクスボーイ」/長坂さんは陶芸作品もつくる。越前焼で、右目から頭部にかけて現地のゴミを使った(写真:長坂さん提供)

「エレクトロニクスボーイ」/長坂さんは陶芸作品もつくる。越前焼で、右目から頭部にかけて現地のゴミを使った(写真:長坂さん提供)

電子廃棄物を燃やして金属をとる地元住民たちと一緒に写真に納まる長坂真護さん(中央)。日本に一時帰国中だが、11月には現地に戻る(写真:長坂さん提供)

電子廃棄物を燃やして金属をとる地元住民たちと一緒に写真に納まる長坂真護さん(中央)。日本に一時帰国中だが、11月には現地に戻る(写真:長坂さん提供)

 それならば、人々が健康を害さずに稼げる方法を考えれば、違法投棄され続けるゴミの山が逆に人々の生活を豊かにする「宝の山」に化けるかもしれない。そう考えた長坂さんは、日本国内で専門家らから助言を得て、リサイクル工場建設という大きな目標を掲げて動き出した。技術者つきで最先端のリサイクル工場を造るには150億円の資金が必要になるという。

 ゴミの山を宝の山に変える。その理念を、資金集めにも活用した。アグボグブロシエの廃棄物をそのまま使った絵画制作だ。そうした作品の個展や講演会などをガーナや日本、米国などで積極的に開催し、自分で撮影した現地の写真や自ら編集した動画を見せて、現状を訴える。ガーナには、こうした活動の拠点にする「マゴ・トラッシュ・ミュージアム」も建設する予定だ。民泊仲介サイトの米エアビーアンドビーのような仕組みを利用した宿泊機能もつけ、リサイクル工場建設への資金調達にも生かす。世界銀行の統計によると、年間約90万人近い外国人観光客がガーナを訪れている。

 もちろん単独で問題を解決できるとは思っていない。

「自分なりにできることから始める。様々な活動を通じて広く問題が認識、共有されるようにして、行動を起こしてくれる人を増やしたい」

 認識は広がりをみせた。環境、ホテル、芸術など各業界から支援者が出て、長坂さんの周囲に集まりだした。現地の廃棄物を活用して制作した作品には高額の値がつき、次々と買い手が現れるようになった。

 作品「ガーナの国旗」を1千万円で買った大阪府阪南市在住のアートコレクター田村圭さん(37)が語る。

「ゴミを宝の山に変えようというのが面白い。何かをアートでここまで変えられる人は、なかなかいない。作品を買えば、工場建設への応援資金にもなる」

 所有する絵を何点か売って1千万円を工面した田村さんは、今後も長坂さんの作品を購入したいと意欲的だ。ガーナでの取り組みが、作品に付加価値を与えている。この作品を含め、すでに複数の絵に買い手がついており、今年はわずか半年の絵画販売だけで、1億円以上が集まったという。

 それでもリサイクル工場建設を実現するには、まだ遠い。その間も心配される健康被害対策として、まずはガスマスクを300人分用意し、現地の人たちに手渡した。大声で歓喜しながらマスクをつける現地の人たちの姿が、動画に残されている。

 昨年3月、ドイツ政府はアグボグブロシエに労働者と地球環境を守るためのリサイクル施設と、住民の健康管理施設を建設するためにガーナ政府と協力する計画を発表した。ただ、国が動いても、実際にいつ完成するかは分からない。それを個人で実現しようとしているのが長坂さんだ。高い目標にも見えるが、長坂さんはこう強調する。

「理想論で何が変わるの、何人を助けられるの、と言う人もいる。それでも人を助けたいという気持ちを大切にしたい。僕がアートを選択したのは、自分のためではなく、人を救うためだったと気づいてしまった。そして、アートには人を救う力があると確信しています」

(編集部・山本大輔)

AERA 2018年11月5日号


トップにもどる AERA記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい