「数だけでなく、要職に就いている女性職員も多いですね。女性は序列ではなく、組織を俯瞰し自分の役割を客観視します。そして役目を果たそうとする。仕事の進め方も合理的です」

 白井准教授の専門は都市工学、研究テーマは公的なインフラで、資源でもある森や水の制度、それに関する技術開発など幅広い。同キャンパスでは木造建築に始まり、材料である木材、そして林業まで、ひととおり教えている。座学で学んだことを、実際の林業や建築の現場で演習することもあるという。

「林業は自然相手の仕事です。自然を人間の思い通りにしようとすれば、自分も傷を負ってしまう。現場へ行くと、自然に対する謙虚さや、自分とは異なる相手への畏敬や思いやりも生まれます。教育として、木を扱うことは非常に効果的だと思う」(白井准教授)

 SFCの教員はほとんどが留学を体験しており、社会で働いた経験を持つ教員も多い。白井准教授も会社員の経験がありドイツに留学し、フランスでは共同で研究を行っていた。

「SFCは開かれた環境だと思います。研究者としての男女差を感じたことはありませんね。研究者として生き残るのは、男女関係なく大変。でも厳しい状況の時こそ、自分の能力をパワーアップさせるチャンスだと考えています」

 女性教員の比率は、女子の大学進学率にも影響される。50代の教員が大学を受験した当時は、女性の進学率が十数%だった。大学に進学する男女差は年々縮まり、18年は女子の進学率が50.1%と初めて5割を超えた。女性教員の数も、将来は大きく伸びることが予測される。女性教員の存在は女子学生にとって、ロールモデルになる。数が少ない理工系などの分野で増えれば、女性の活躍する場が増えるのではないか。(ライター・柿崎明子)

AERA 2018年11月5日号より抜粋