「子どもが食べてくれないときは悩んだこともあったけど、『死なへんわ~』と思って。それに、ねんねトレーニング(赤ちゃんが一人で眠る訓練)は子どもを親の思うように、都合がいいようにしつけるものだと思うので、私は最初からしませんでした」

 ただ、すべて「まあまあ」ではなく、一番大切にしていることがあるという。それが「基本的信頼感」だ。

「人間って信頼していいんだと思えた子は自分も信じられるようになる。この基本的信頼感を育むために、自我が生まれる前の乳幼児期は、子どもをありのまま、すべて受け入れようと思ってきました」

 産婦人科医として感じているのは、妊娠、出産をはじめとした生命科学の分野のネット情報は、“トンデモ”話の巣窟だということ。宋さんは言う。

「例えば『生理は痛くて当たり前』『妊活は体を温めること』と思っている人がどれほど多いことか。自分の体や性について知識や教育を受ける機会がないことが根底にある。そして教育情報はコンプレックスをつつくものばかり。多数派が正しいわけじゃないし、子育てには、明らかな不正解やデマはあるけど、正解はないと思っています。自分の子どもと向き合いながら育てていくしかないんじゃないかな」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2018年10月29日号より抜粋