関東以外でも、愛知や大阪、長野など計40都道府県で風疹患者の報告が出ている。写真は記者に予防接種を打つ下川院長(撮影/写真部・小山幸佑)
関東以外でも、愛知や大阪、長野など計40都道府県で風疹患者の報告が出ている。写真は記者に予防接種を打つ下川院長(撮影/写真部・小山幸佑)
39歳6カ月以上の男性は風疹予防接種の機会がない(AERA 2018年10月29日号より)
39歳6カ月以上の男性は風疹予防接種の機会がない(AERA 2018年10月29日号より)

 風疹が再び大流行の兆しを見せている。風疹患者の多くは30代から50代の男性で、「予防接種空白期」と重なる。「無自覚な感染者」になってしまうリスクがある。

【図表で見る】39歳6カ月以上の男性は風疹予防接種の機会がない

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 2013年の流行以来、減少傾向にあった風疹が、再び猛威を振るっている。昨年の風疹患者の報告数が93人なのに対し、直近1週間(10月1~7日)で135人、18年の累計患者数は10日時点で、1103人になった。

 地域別に見ると、東京都362人、千葉県216人、神奈川県132人、埼玉県78人と、関東を中心に患者が増えている。特筆すべきは風疹患者の多くが男性、それも働く世代が中心になっていることだ。男性患者は女性患者の約5倍で、30代から40代が男性全体の62%を占めた。筆者(37)もその世代の一人だ。

 18日、風疹の予防接種を受けようと、東京都目黒区のゆうてんじ内科を訪ねた。予防接種には、風疹単独のものと、はしかと風疹の混合ワクチンがある。法律に基づいた定期接種ではないため、基本は自費だ。単独なら数千円、混合なら1万円前後と、決して安くはないが、自治体や会社の補助がないか確認するといい。例えば目黒区は、条件はあるが、風疹の免疫の有無を調べる抗体検査の費用と、抗体が不十分だった場合には予防接種の費用も全額補助している。ただ、検査の結果が出るまでに2~4日かかるため、ゆうてんじ内科の下川耕太郎院長は「免疫がある人に再度接種しても問題はなく、忙しい世代は検査せずに受ける人が多い」と話す。

 風疹ではどんな症状が出るのか。国立感染症研究所は、主な症状として「発疹、発熱、リンパ節の腫れ」を挙げる。下川院長は「全身に小さな粒の赤い発疹が出るのが特徴です。主にせきやくしゃみなどのしぶきによって感染します。感染力が強く、インフルエンザウイルスの3~5倍程度とも言われます」。

 なぜ、患者が特定の世代に集まるのか。左図の通り「生まれた年により予防接種の機会差がある」(下川院長)からだ。男女共に定期接種となったのは1979年4月2日以降。それ以前に生まれた男性は、一度も予防接種を受けていない。筆者も該当する87年10月1日生まれまでは中学生のときに医療機関で個別接種する方法だったが、ワクチン接種が敬遠された世代で、接種率は低い。感染症流行予測調査(16年度)によれば、30代後半から50代の男性の5人に1人は風疹の免疫を持っていない。

「風疹にかかっても15~30%の人には症状が出ません。インフルエンザほど高熱にならず、発疹にかゆみもない。故に、働き盛りの世代が無理してでも会社に通い、無意識に感染を拡大させる恐れがある」(下川院長)

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