ネット右翼の行動や心理を研究するサイト「ネトウヨ大百科」。「黒歴史」から早く決別したいという人が、ネット右翼になった経緯や当時の心理を自己分析した告白を日々投稿している。

 7月に同サイトを立ち上げた管理人によると、SNSでネット右翼的な発信をしているのは10代と40代の男性に目立つが、体験談を投稿するのは主に10~20代だと明かす。離脱の動機は、大学進学や就職などを機に社会の多様性に触れることで「覚醒」するケースが多い。一方、40代以降の「脱ネトウヨ」はほとんど確認できないという。

「ネット右翼」の規模や属性に関する統計学上の調査研究も進む。

 大阪大学大学院の辻大介准教授(コミュニケーション論)は、2007、14、17年と過去3回にわたるウェブ調査(16~64歳対象、07年は20~44歳対象)で、「ネット右翼」の属性や特質を浮かび上がらせた。

 辻准教授は「ネット右翼」を、(1)中国と韓国への排外的態度(2)保守的・愛国的政治志向の強さ(3)ネット上での意見発信・議論への参加の3点で定義。17年調査では、「ネット右翼」層は調査対象全体の1.1%、(3)を除いたネット右翼に賛同的な「シンパ層」は5.3%だった。

 07年の調査対象年齢(20~44歳)に限定して比較すると、ネット右翼層は過去10年間で1.3%から2.3%、シンパ層を含むと4.0%から7.7%に増加していることが判明した。背景について辻准教授はこう分析する。

「政府の世論調査でも、韓国や中国に親しみを感じない層は増えており、世論全般に嫌韓、嫌中の傾向が高まっていることが大きいと思います。ネット右翼を支えているのは『愛国心』というよりむしろ、他国への『蔑視』であることを示唆しています」

 性別は男性が一貫して多く、17年の調査結果でも71%に上った。学歴や世帯収入との関連は見いだせないが、職業に関しては「無職」が多く、「学生」が少ない傾向を確認した。さらに、年齢が高いほどネット右翼になりやすい傾向が、「さほど強くはないが認められる」と辻准教授は指摘する。

「ナショナリズムや排外意識は年配者ほど強くなりやすいですが、この一般的傾向が『ネット右翼』にも表れている可能性も考えられます」

 一方、17年末に20歳から79歳の首都圏在住者を対象に行われたウェブ調査に参加した東北大学の永吉希久子准教授(社会学)は、ネット右翼の特徴として着目すべきなのは「その人が持つ政治的態度」だと唱える。

「保守的な考えを持つ人の中でも、自分の意見を政治に反映できると感じている人たち、というのがネット右翼像としては妥当なのかなと思います。市民団体や自治会の活動にも積極的に参加するなど政治的にアクティブな傾向も浮かんでいます」

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