朝7時のチバスタアクア金田。定期代は高い路線でも月5万円以下で、全額会社負担になっていると答える人が大半だった(撮影/編集部・澤田晃宏)
朝7時のチバスタアクア金田。定期代は高い路線でも月5万円以下で、全額会社負担になっていると答える人が大半だった(撮影/編集部・澤田晃宏)
田端さん一家。車社会だが、徒歩圏内にスーパーやコンビニも。ご近所さんは田端さん同様、他府県からの移住者だという(撮影/編集部・澤田晃宏)
田端さん一家。車社会だが、徒歩圏内にスーパーやコンビニも。ご近所さんは田端さん同様、他府県からの移住者だという(撮影/編集部・澤田晃宏)
都内と高速バス通勤エリアの家賃比較(AERA 2018年10月8日号より)
都内と高速バス通勤エリアの家賃比較(AERA 2018年10月8日号より)

 アクアラインを渡る子育て世代が増えている。高速バスが都内のオフィスへの通勤手段として定着したからだ。満員電車に別れを告げるだけではなく、都内では考えられない夢のマイホームも。

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 都内で働くファイナンシャルプランナーの鈴木由紀子さん(51)は、会食などで時間が遅くなると、相手から気遣われることが多い。鈴木さんが住む千葉県市原市は、東京から見ると千葉市のまだ先で遠いからだ。

「終電はまだあるの?」と心配されるが、鈴木さんは待っていましたとばかりに言い放つ。

「新宿駅西口を23時30分に出発する『終バス』で、乗り換えなく座って帰れますから」

 高速バスで通勤していること、深夜までバスが走っていることに、相手は二重の驚きを見せる。

「朝の通勤時間帯は、東京の電車並みの間隔で高速バスが走っています。バスは必ず座れるので、電車を使う人がすっかり少なくなりました」

 鈴木さんが利用するのは、神奈川県川崎市と千葉県木更津市を結ぶ東京湾アクアラインを走る高速バスだ。1997年の開通時は4路線56便だったが、2015年には23路線476便に。千葉県側の木更津市や周辺の袖ケ浦市、市原市に住む人の都心への足になっている。

 朝の通勤ラッシュ時に木更津市内最大のバスターミナル「チバスタアクア金田」に行ってみた。ターミナル周辺には空き地が目立つが、隣接して高速バス利用者のための駐車場があった。料金は月決めで3千円程度と安い。バスターミナルまでは車で通勤し、高速バスに乗り継ぐ。駐車場からは次々とスーツ姿の働く男女が現れ、高速バス乗り場に列を作っては、すぐさまバスに吸い込まれていった。

 例えば、最も本数の多い7時台の時刻表を見ると、東京駅行きのバスは1時間になんと18本。木更津駅から東京駅まで電車なら約1時間20分かかるが、高速バスなら約40分。料金は電車1320円、高速バス1350円とほぼ変わらず、割安な回数券や高速バス定期券もある。

 隣の袖ケ浦市にも大きなバスターミナルがあり、千葉県側から東京、新宿、品川などの都内主要ターミナル駅に加え、横浜や羽田空港行きのバスもある。

 千葉県議の高橋浩さん(56)は「高速バスの利便性が増すと同時に移住者が増えた」と話す。

「人口減少で木更津市は低迷していましたが、09年に東京湾アクアラインの通行料金が800円に値下がりし、12年には三井アウトレットパークもできた。その分、バスの路線や本数が増加して高速バスの存在が知られるようになり、移住を検討する人たちも増えてきたのです」

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