7隻目のイージス艦「まや」(満載1万250トン)は今年7月30日に進水。2021年に8隻態勢が完成、弾道ミサイルの警戒配置に余裕が出る (c)朝日新聞社
7隻目のイージス艦「まや」(満載1万250トン)は今年7月30日に進水。2021年に8隻態勢が完成、弾道ミサイルの警戒配置に余裕が出る (c)朝日新聞社
イージス・アショアの配備計画(AERA 2018年10月1日号より)
イージス・アショアの配備計画(AERA 2018年10月1日号より)

 防衛省が多額の防衛費を投じて日本に配備する「陸上イージス」。ミサイル攻撃から日本を守る。どうやら導入しても防衛省の言い分どおりにはならないようだ。

【図で見る】イージス・アショアの配備計画

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「イージス・システム」は本来米海軍の空母を航空攻撃から守る巡洋艦、駆逐艦用に開発されたが、一部の艦は弾道ミサイル防衛用に改装された。日本のイージス艦も6隻中4隻が弾道ミサイル迎撃ミサイルを搭載している。このシステムを陸上に配備するのが「イージス・アショア」(陸上イージス)だ。防衛省が来年度予算の概算要求に盛り込んだ。

 政府は2017年12月、2基を導入することを決め、秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場と山口県萩市の同むつみ演習場に配備する計画だ。米国への支払いは総額4664億円だが、これには新型の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」(1発約40億円)は含まれず、1基当たりの定数は24発だから48発を買えば計約1900億円、一部の用地買収や整地、建設費なども含めば7千億円に達しそうだ。

 陸上イージスは本来自衛隊が求めたものではなく、13年12月の「防衛計画の大綱」(10年間を見通す)にも「中期防衛力整備計画」(5年間)にも入っていなかった。米国の要請をのんだ「政治主導」で導入を決めたから、必要性の説明に無理をせざるをえない。配備予定地の自治体や住民への説明で防衛省は「現在のミサイル防衛用のイージス艦4隻では常時警戒態勢を続けるのは困難だから、陸上イージスが必要」と説き、今年度の防衛白書の「解説」にも同じことを書いている。

 たしかに艦艇の4分の1は定期整備のためドックに入っているから、可動は3隻、うち2隻を常に海上に出し続けるのは無理があった。だからこそ「大綱」「中期防」はミサイル迎撃用ミサイルを積むイージス艦を8隻にすることを決めたのだ。現在の「こんごう」級4隻に加え「あたご」級2隻は新型の迎撃ミサイルを運用するように改装し、さらに2隻を建造中で、7番目のイージス艦「まや」は今年7月30日に進水し、20年就役の予定、もう1隻は21年に就役、8隻態勢が完成する。陸上イージスの納期は25年、配備はさらに遅れる。

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