「あのお金がなかったら…」被災者が語る「現金」の重要性 (2/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「あのお金がなかったら…」被災者が語る「現金」の重要性

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川口穣AERA
イラスト:kucci

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「震災から7年半たった今も、再建先を探し続けています」

 青山さんには、市職員のほかにもうひとつの顔がある。石巻市の旧北上町にある古刹・西蔵寺の24代目住職。職住一体だった自宅と寺は、津波で全壊・流失した。檀家である地区住民の近くで、それも職住一体で寺を再建したい。それが青山さんの願いだ。しかし、地区住民の多くが自宅を再建した高台の造成地はあくまで住宅用地で、宗教施設を建てることはできない。一方、かつて自宅と寺があった土地は危険区域に指定され、寺は建てられるが人は住めない。人々の生活に根付く寺は、住職が「通勤」する場所ではなく、常に暮らしている場所であるべきだと青山さんは考えている。

「家と寺を同時に建てられる場所がないんです。近隣の山地を提供するという申し出もいただいていますが、建設費用だけでなく造成費用も自分で捻出するのはとても無理。解決策は見つかりません」

 災害で失った家のローンに苦しむ人も多い。被災して住宅を失うと、被災者生活再建支援法により最大300万円の給付金が支給される。また、義援金などもあるが、多くの場合、家の修復や建て替えには不十分だ。東日本大震災のときは、事後に被災ローンの減免制度が作られたが制限も多く、利用はごく一部にとどまった。なお、減免制度は16年以降、新たなガイドラインとして運用が始まっている。

前出の阿部さんの自宅は、新築して約6年で被災した。危険区域に指定されたため土地は市に買い取ってもらえたが、それでも1千万円程度の住宅ローンが残った。稼ぎ手だった夫は、勤め先が操業できなくなり、11年3月末で解雇。ローン返済が危ぶまれたが、半年間の猶予を受けたうえで返済を続けた。夫は石巻ですぐに再就職することが難しかったため、11年の夏から出稼ぎのような形で関東へ移り、働いている。残ったローンを返し終わり、自宅を再建したのは2年前。二重ローンという選択肢もあったが、返済額に不安が大きく、旧ローンを返し終わるまで新たなローンには踏み出せなかった。

「年々大きくなる子どもたちのことも考えて再建することにしましたが、若いころに組むローンと、40代半ばになって組むローンだと、重みも違いますね」(阿部さん)


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