「ソロ本」をテーマにした読書会に集まったのは…(※写真はイメージ)
「ソロ本」をテーマにした読書会に集まったのは…(※写真はイメージ)

 独身男女が多く集うといわれる読書会。「ソロ本」がテーマとなれば見逃せない。既婚・未婚の立場を超えた真摯な議論の先に一筋の希望を見た。

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 東京・渋谷のレンタルルームは、心地よい緊張感に包まれていた。

 7月最後の日曜日。午前9時すぎから始まった「読書会」に20代~50代の女性7人、男性4人の計11人が集まった。職業は会社員、主婦、公務員、フリーランス……。業種も保険、エネルギー、出版、IT、マスコミ、小学校教員とバラエティに富む。絶好の異業種交流の場だが、名刺交換する人は皆無だ。それぞれが軽い会釈を交わしてラウンド席に着く。

 この日のテーマ本は、荒川和久著『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)。同書を選んだ理由について、「くつろぎ読書」を主催するサヤカさん(30代、仮名=以下同)が、冒頭でこう説明した。

「この本はソロで生きることを、すべての人間に通じる普遍的なテーマと捉えている点に大変興味を持ちました」

 サヤカさんは毎回、SNSで10人前後の参加者を募る。これまでは紹介型読書会・ノーベル文学賞受賞作家作品の読書会などを企画してきた。今回、趣の異なる本を選んだ背景には、こんな事情もある。

「私自身独身で、このままでいいのかという葛藤があります。そろそろ40歳になるプレッシャーもあって、いろんな人の意見を聞きたい、という個人的な思いもありました」(サヤカさん)

 家族類型別の世帯割合は、2010年の国勢調査で「単独」が占める割合が30%を超え、「夫婦と子」を逆転、最もポピュラーな形態になった。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、40年の「単独」の世帯割合は約40%に上る。

 不妊治療中に体調が悪化し、会社を退職した既婚のヒロコさん(40)は、参加動機をこう語った。

「医師からは『時間との闘い』と言われているので、この先、子どもを授かるか分からない状況です。もしかしたらあり得る自分の将来のことを知りたいな、という気持ちで参加しました」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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