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リアルすぎる「浮浪児」の人形 作家が自らの戦争体験を表現

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山本大輔AERA
めったに見せない作業場で、平和の尊さを語る与勇輝。こだわっている木綿の質感が、人形の肌を生き返らせる(撮影/写真部・加藤夏子)

めったに見せない作業場で、平和の尊さを語る与勇輝。こだわっている木綿の質感が、人形の肌を生き返らせる(撮影/写真部・加藤夏子)

「平和は大事だよ。だけど、戦争が単なる歴史となった今の子どもたちには別の価値観がある。戦争の記憶が風化するのは仕方ない。説教がましい気持ちで作っていない。こういう時代があったんだって、こっちが問いかけているような気持ち。それぞれの価値観で何かを感じてもらえるなら、それでいいの」

 戦争にかかわる人形は、すべて暗い色でつくられている。例えば、幸せな時代の女の子3人が一緒にすやすや眠る作品「うたた寝」の色づかいと比較すると一目瞭然だ。


「自然と暗くなっちゃうの。戦時中の色、戦後の色、今の世の中の色は違う。あの時代は灰色の記憶なんだ」

 それでも作品の暗さは、現実よりも抑制したものだという。

「本当はもっと暗いの。ひどいの。あんなもんじゃない。もっと汚い。しらみとかが、いてね。でも、そこまで作れなかった。どうしても作れなかった」

 9月で81歳になる与は少し焦っている。記憶がおぼろげになる前に、見たままの「浮浪児」を、もう一度作り直したいとも思っている。約1時間半の間、優しい語り口だった与が、語気を強めて強調したことがある。

「大人の勝手な戦争で、子どもにつらい思いをさせちゃダメ。子どものことを考えないの、大人って。世界中で子どもが犠牲になってるでしょ。胸が痛い」

 これまでに生み出した人形は約600体。個展も国内外で約120回に及ぶ。昭和を描いた人形は今春、パリで開催した個展でも展示され、高い評価を得た。9月には岡山市で作品展を開く予定だ。河口湖ミューズ館・与勇輝館(山梨県富士河口湖町)では常時約100体が展示されている。 (文中敬称略)(編集部・山本大輔)

AERA 2018年8月13-20日合併号


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