香港で起こった「雨傘運動」から4年。デモで出会った学生らを追った79日間をドキュメンタリー映画「乱世備忘 僕らの雨傘運動」にまとめたチャン・ジーウン監督と星野博美さんが語り合った。
* * *
星野:映画を見て、感動したと同時に「悲しい」という思いがありました。私も2014年の雨傘運動の時に1週間、香港に滞在しました。あれから4年弱が経ち、あの運動が何だったのか、あの運動はとても意味があったはずなのに、いまの香港では意味がないように感じられるという現実が悲しかったんです。
チャン:確かに雨傘運動後の香港は変えることができなかったことから憂鬱な空気がありますし、無力感もあります。政治に関するニュースにも関心が持てなくなっているような状況です。
星野:あれから中国が手を替え品を替え、抑圧の方法を変えて香港の事情に対応しています。
チャン:雨傘運動の後で多くの若者たちが政治に参加しようと試み、立法会に立候補して当選しました。でも政府もさまざまな方法で追い出してしまった。私たちはずっと模索しています。政治、立法会に入ることもできず、雨傘運動のような大きな運動を起こしても結果が出ない状況の中で、以前と違う方法でより多くの人を巻き込み、変えていくにはどうしたらいいかということを常に考えています。
星野:雨傘運動の時に、「生於乱世有種責任(乱世に生まれたので責任がある)」という言葉がありました。10代、20代の人たちが「乱世に生きている責任がある」という、ものすごく重い言葉を吐いたことに感動したんですけど。
チャン:私も感動しました。この作品の中でも描いていることですが、若い人たちは危機感と責任感を持って参加しています。彼らは警察に捕まるというリスクがあるにもかかわらず、警察に向き合った。そういう姿を見た時に私も、この作品を撮るべきだと考えました。それがこの作品が生まれるきっかけです。