チャン:彼らにとっては自分たちが社会を変えることができるんじゃないかと思って参加していたわけです。普段の香港の生活から抜け出して自分たちが美しい世の中に変えていけると考えていた。だから占拠区の中ではさまざまなアート作品が生まれたり、風力発電があったり、多様なコミュニティーが出現しました。自分たちの理想の香港像を作っていたのです。

星野:多様なコミュニティーを試行錯誤していたからこそあの現場に行きたくなってしまう。映画の中でも家に帰って親に文句を言われてもすぐにあそこに行っちゃうという姿が描かれていたんですが、あの気持ちがよく分かって。行きたくなっちゃう。なぜなら、香港にない美しいコミュニティーがあるから。それが雨傘運動の一番の魅力だったと思うんです。

チャン:その小さな香港をさらに大きな香港にしていくという思いというのもありました。占拠区にあったものは香港になかったものではありますが、それをどういう風に大きな香港にしていくかということも考えていたわけです。もちろん占拠している状態を長く続けることはできません。元の状態に戻った後もどうやって自分たちの精神状態を保ち続けるかということが重要だと思います。

星野:そのためにはどういうことが必要と考えますか?

チャン:雨傘運動に参加していた人たちは、その場所では皆が同じような考え方をしていると思っていました。しかし、外にいる人たちとは考えが同じではなかったということに気づきました。今は多くの人たちがそれぞれのコミュニティーに帰っていく形で、新しい動きというのを考えています。例えば私のようにこの作品を撮って上映する、いろんな国の人たちに見せる、ということも精神状態を維持し、次につなげていくということになっていると思います。この運動に参加した多くの人たちというのは、心の中にはその思いというのをとどめていて、それをどうやって続けていけばいいのかというのを考えています。

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