ウェブマーケター 山田竜也さん(38)(AERA 2018年7月2日号より、撮影:伊ケ崎忍)
ウェブマーケター 山田竜也さん(38)(AERA 2018年7月2日号より、撮影:伊ケ崎忍)
経営コンサルタント 古市今日子さん(41)(AERA 2018年7月2日号より、撮影:横関一浩)
経営コンサルタント 古市今日子さん(41)(AERA 2018年7月2日号より、撮影:横関一浩)
PR 田美智子さん(37)(AERA 2018年7月2日号より、撮影:伊ケ崎忍)
PR 田美智子さん(37)(AERA 2018年7月2日号より、撮影:伊ケ崎忍)

「フリーランス」という働き方が進化している。「自由だけど不安定」「デザイナーやエンジニアの話」。今回、取材したのはそんなイメージを覆す新型フリーランス。共通するのは、会社員と遜色ない年収600万円以上を稼ぐ力だ。

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 ソファでは外国人と日本人がコーヒーカップ片手にブレーク。ガラス張りのスペースではいくつものグループがミーティング中だ。

 ここは「WeWork丸の内北口」。米国のベンチャー企業「WeWork」が世界に展開するコワーキングスペースで、日本に上陸してまだ間もないものの、すでに都内4カ所でオープンしている。

 出迎えてくれたのは、ここに専用デスクを借りているフリーランスの山田竜也さん(38)。ウェブマーケティングのコンサルタントなどとして、現在、スタートアップ企業を中心に7~10社の顧客を持ち、年収はなんと「1千万円以上」。ただし、こう見えてなかなかの苦労人だ。

 大学卒業後、3年半の会社勤めのあと、「向いてない」と確信して、2007年に退職。ほぼ経験のなかったウェブマーケティングの仕事で独立することを決意する。

 独学でマーケティングの勉強を始め、当面の事業資金として、自治体などから約900万円を借り入れた。だが、フリーランスにはこの借金が重荷になった。

 アフィリエイトや株式投資で食いつないだものの、資金は減る一方。自己破産も見えてきた頃、今度はうつ病に。暗黒時代から抜け出したのは、独立から5年ほど経った頃だ。

「実家でしばらく療養していましたが、病気も回復して再び一人暮らしを始めました。その頃、ちょうどSNSが普及し、コワーキングスペースなる場所を見かけるようになった。私もそこに仕事場を借りるようになりました」

 時代の変わり目が来ていた。経験なし。スキルなし。コネなし。昔ならありえないほど無謀な独立を成功へと導いたのは、ネット上とリアルの両方に出現した新しい空間と、そこで生まれるネットワークだった。

 起業家など多くの知り合いができ、彼らの会社のウェブ改良の相談やセミナーを無料で引き受けたりするうちに、仕事としての依頼も、どんどん増えていった。

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