認知行動療法の主な流れ※大石医師への取材などをもとに編集部で作成(AERA 2018年6月18日号より)
認知行動療法の主な流れ※大石医師への取材などをもとに編集部で作成(AERA 2018年6月18日号より)
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条件反射制御法の主な流れ(AERA 2018年6月18日号より)
条件反射制御法の主な流れ(AERA 2018年6月18日号より)

 性犯罪を繰り返す人は、性嗜好障害を抱えている可能性があるという。被害者をなくすためには加害者の支援も必要だ。求められる療法とは。

【図】条件反射制御法の主な流れはこちら

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 なぜ性犯罪を繰り返したのか。

男性(40)が女児を性の対象と見たのは小学6年のとき。夜、近所の年下の女の子の下着をベランダから盗んだことがきっかけだった。じきに行動はエスカレートし、より強い刺激を求めるようになった。21歳の時、強姦目的で一人暮らしの女性のアパートに押し入り、強姦未遂罪などで逮捕された。実刑判決を受け、1年半で仮出所した。

「もう絶対やらない」と誓ったが、性的衝動を抑えることはできなかった。すぐ繰り返すようになり、2年後の25歳の時に4件の強姦致傷罪で警察に逮捕された。被害者は全員20代前半の女性だった。男性は懲役13年が確定して服役し、一昨年夏に出所した。常に罪悪感はあったという男性は振り返る。

「何でこんなことをしたんだろうと落ち込み、しばらくはやめるんですけど、それも1週間くらい。その時になると、目の前のことしか見えない」

 強姦、強制わいせつ、痴漢、盗撮などの性犯罪。法務省の「犯罪白書」(2017年版)によると、強姦の認知件数は1964年に戦後最多の6857件を記録した後、減少傾向にあるが15年は1200件近く。

「性犯罪の動機を、性欲だけでは説明できない」

 依存症治療の専門病院「大石クリニック」(横浜市)の院長・大石雅之医師はそう指摘する。

「性犯罪者は性嗜好障害という病気。逮捕されれば仕事も家庭も失うかもしれないのにやめられないのは、性依存症という病気だからです」

 10年から性嗜好障害の治療に取り組む大石医師によると、性犯罪は意志だけではコントロールできず、アルコール依存症などと同じ「脳の病気」だという。

 性犯罪の特徴の一つは、頭では理解していても性衝動を抑えられず再犯に及ぶことにある。「犯罪白書」によれば、判決確定後5年以内に再犯した人の割合は、強制わいせつは16%、強姦(単独)は3.6%だった。

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