野球解説者で、日本女子プロ野球機構のスーパーバイザーを務める、太田幸司さん(66)は女子野球の魅力を次のように語る。

「初めて女子野球の試合を見たとき、そのひたむきなプレーに、自分が野球を始めたころの野球の楽しさを思い出しました。その技術の高さにも驚かされました」

 川端さんたち第1世代では他のスポーツを経由してプロ野球に入ってきた選手が少なくない。男子野球部員に交じってプレーしてきた人たちもいる。クラブチーム・茨城ゴールデンゴールズの監督兼選手の片岡安祐美さん(31)もそうしたひとりだ。片岡さんは言う。

「練習メニューは絶対男子と変えないでください、とずっと言ってきました」

 小学校4年生のとき学校の部活で野球をスタート。原点にあったのは「甲子園への憧れ」だった。

「あの舞台に立ちたい」

 中学、高校と男子部員に紅一点交じり野球を続ける。規定により、高校では女子は公式戦に出場できないことは入学前に知っていた。

「自分が頑張ることで規定を変えてやる、という思いで入部しました」(片岡さん)

 小学校までは男子との違いを感じることはなかったが、中学、高校では体格や体力差を痛感。頭を使うプレーでカバーするなど、自分の持ち味をその都度見いだし、生かしてきた。だが結局、高校での甲子園出場の夢はかなわなかった。

「甲子園の球児が自分より年下に見えるようになったのは24歳ぐらいになってから。憧れが強すぎて(笑)。甲子園で試合ができなくても、練習だけでもいい。それがかなえられたら選手を引退してもいいと、いまでも思っています」

 そんな一途な思いを抱き続けてきた片岡さんが球界に望むのは、

「野球をもっと広く、多くの人に開いてほしい」

 スポーツは本来、性別、年齢、国籍を超えて人をつなぐもの。いまの「野球人口の減少」は旧来の枠内にとらわれた話だ。野球をやりたい人が自由に、生涯にわたって楽しめる環境をつくる──。曲がり角に来た球界に問われているのは、課題への「意識の転換」と「実行力」だ。(編集部・石田かおる)

AERA 6月11日号より抜粋