「メディアにおけるセクハラを考える会」の会見。日本外国特派員協会で谷口真由美・大阪国際大准教授は、セクハラの実態を訴えた (c)朝日新聞社
「メディアにおけるセクハラを考える会」の会見。日本外国特派員協会で谷口真由美・大阪国際大准教授は、セクハラの実態を訴えた (c)朝日新聞社

 前財務事務次官のセクハラ問題は、マスコミ業界で働く女性が直面する現状の一端を明らかにした。この状況を変えられるのかが問われている。

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「取材先でセクハラに遭っても自分の力量不足だと思ってきた」「セクハラをうまくいなせてこそ一人前という風潮の中、受けた傷に蓋をして過ごしてきてしまった」──。

 福田淳一前財務事務次官のセクハラ問題をきっかけに設立された「メディアで働く女性ネットワーク」の記者会見が、5月15日に行われた。そこで紹介されたのは、自らの被害の証言とともに、痛々しいまでに自分を責める言葉だった。代表世話人でフリーランスジャーナリストの松元千枝さんはこう語った。

「声なき声を代弁するために報道の世界に入ったのに、その中で自分たちこそが声なき声の当事者だったということに気づかされました」

 新聞、テレビ、出版、インターネットメディアやフリーランスで働く女性たち31社86人(会見当時)が集まって結成された同会は同日、安倍晋三首相、麻生太郎財務相、野田聖子女性活躍担当相に要望書などを提出。今後は相談活動やシンポジウムの開催などを検討している。

 17日には性暴力被害当事者と報道関係者らで構成する「性暴力と報道対話の会」によるメディア関係者へのセクハラに関するアンケート結果も公表された。新聞社、放送局などに勤務する記者、ディレクター、プロデューサーなどの男女107人から回答があり、セクハラを受けたことがあると回答した102人のうち96%が複数回のセクハラを経験。取材先・取引先が40%、上司が24%、先輩が19%という結果だった。会見に出席した弁護士の上谷さくらさんは、こう語った。

「(アンケートの)感想は、強かんや強制わいせつで刑事事件になっている被害者の感想とほぼ一緒。セクハラというと軽い感じになるが、重大な性犯罪だという認識を持ってほしい」

 また、男性にも当事者意識を持ってほしいと強調。

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