栗城史多さん (c)朝日新聞社
栗城史多さん (c)朝日新聞社

 登山家として、特筆すべき実績を残してきたわけではない。それでも、彼のfacebookページに書き込まれた死を伝える投稿には、わずか1日で2万6000を超えるアクション(「いいね」などの反応)と3千件以上のコメントが寄せられた。

 栗城史多さん、35歳。5月21日、8度目のエベレスト挑戦の途上で帰らぬ人となった。栗城さんは大学山岳部で登山をはじめ、これまでに7大陸最高峰のうちエベレストを除く6つを制覇。8千メートルを越える高峰にも、4度登頂してきた。

 栗城さんは「冒険の共有」を掲げ、登山の様子のライブ配信などに取り組んできた。2012年、エベレストで重度の凍傷にかかり手の指9本を失ったのちも登山を続け、2014年には中国・パキスタン国境の高峰ブロード・ピーク(8047メートル)の登頂に成功。登頂の瞬間は、無線を通じてベースキャンプに届く栗城さんの声が生配信され、多くのファンが見守った。

 10年来のファンだという30代の女性は、栗城さんの魅力についてこう話す。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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