鈴木:「ラブ×ドック」はファンタジーのふりをした残酷物語。吉田鋼太郎さんが演じた、飛鳥の不倫相手の行動は、見ている男性のほうが痛いと思います。男が不倫したいがために気のある女性に「才能ある」って言っちゃう。最低の行為ですけど、そういう男性っていますよね。それに釣られちゃう女の人もいるし。僕はそういう恋愛を見たこともありますし、友達がたくさんいるので多くの恋の話を聞きます。不倫で明らかにだまされている女性は、本人にそう言っても聞かないでしょ。

吉田:痛い目に遭うまでね(笑)。

鈴木:そう。恋の相談をする人は自分が納得する答えが欲しいだけ。なんてずうずうしいやつなんだと思いますけどね(笑)。

吉田:おさむさんはすごく優しいし相手の言うことをくんであげるから、相談が多いんだと思います。相手の欲しい言葉をあえて言ってあげるからですよ。

鈴木:だってそうしないと終わらないんだもん(笑)。

吉田:おさむさんはいつも演じる人から「人(ニン)」が見えてほしいとおっしゃってましたよね。

鈴木:そう。どんな物語でも役者さんが演じているから役なんですけど、その役が本人と重なった時の最強ぶりってある。「人」が見えた時の爆発力ってすごいよなぁと常々思っています。

吉田:おさむさんはそこに基準があるから、ご自分で脚本を書かれているのに役者に渡したら役者のものだという潔さがあります。だから現場で「羊さん、このせりふはどういう気持ちで言いますか」って自分で書いたのに聞いてくる(笑)。いい意味で役者に任せていただいているんだと思ったので、本当に自由に感じたままに演じました。

鈴木:やりたいことは台本に全部書きました。世界観の構築は信頼しているアートディレクターに入ってもらったりしたので、映画のイメージは見えていました。この映画を見た僕の周りの30代以上の女性たちがみんな言ってくれるのは、最後の橋のシーン。まさに映画はそのクライマックスに向かって走っていきます。そのシーンの爆発力は羊さんの「人」が重なっていないと出ないと思っていました。だから、あのシーンが撮れたときはすごく安心しました。

吉田:私もです。リハーサルでは過呼吸になりましたから。それにしても今回のように、年下から年上までイケメン3人に言い寄られることはこの先の人生でないと思うので、ぜいたくな体験をさせていただきました。キスシーンも……。

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