「外の英会話学校に丸投げするのか、という批判も当初はありました。でも社会で通用するコミュニケーション力を伸ばすため、は餅屋の精神で導入したんです。大学側では、習得した英語を使って何を学ぶか、というプラスアルファに重点を置きます」(藤田さん)

 日本で一番英語力を伸ばせそうな大学を探していて、埼玉から近畿大学に入学した飯塚珠実さん(3年)に聞くと、

「違う大学に通う友達は本当にみんな暇そうで(笑)。近大は授業中に眠れないし、課題が多いです。アルバイトばかりしていたら授業についていけないし、でも一人暮らしだから少しは稼がないと……。お母さんが家事をしてくれる地元のみんながうらやましいです」

 語学系の大学に行きたい学生の大半が、留学を希望している。では、留学したいなら……という基準で名前が真っ先に挙がるのが関西外国語大学だろう。全国の大学を中立な視点で評価した『大学ランキング2018』(小社刊)でも「留学生派遣」の項目で1位だ。

「学部の設置は1966年なんですが、すでに外国語大学はいくつかあって、うちは後発だったんですね。語学を教えるというだけでは他の大学と競争できないだろう、ということになった。ならば留学に先駆けて取り組もう、と」(同大学入試広報企画部次長の稲増哲さん)

 50年以上前、留学は相当珍しく、費用も高かった時代。「留学させます」というキャッチコピーに学生は我も我もと学び、今や54カ国・地域383大学と協定を結ぶまでになった。
 留学したまま現地で就職してしまうパターンもある。

「関西外国語大では英語学の学位を取り、留学先のアメリカの大学では会計学や国際関係学の学位を取得。そのまま現地の監査法人や旅行会社に就職する学生もいますね」(稲増さん)

 御殿山キャンパスは「留学していない、日本にいる時期もグローバルな環境を」という思いで今年4月に開設した。外国人留学生も御殿山キャンパス内の施設で大半の時間を過ごすので、“道を歩けば外国人留学生に当たる”イメージだ。ここでは「おつかれ~」という声ではなく「ハーイ(Hi)」という挨拶のほうが多いという不思議。ちょっとした異国情緒すら感じる。(ライター・柿崎明子)

AERA 2018年4月23日号より抜粋