──今作では、中国人の牛牛(ニュウニュウ)、ポーランド人のシモン・ネーリングら世界のピアニストも「音の出演」で共演。

反田:牛牛は特に小さい頃から有名。彼の今回の演奏を聴き、「ピアノの森」に対する彼の情熱がとっても伝わってきた。

 楽譜は僕らにとっては財産でもあり、作曲家の遺書。ただ、そこに書かれたことだけが全部じゃない。演奏者によって完成されることを想定して書かれているはず。ショパンも、モーツァルトも、ベートーヴェンも。

高木:音楽は再現芸術だけれど、同時に創造芸術でもあるよね。

反田:僕たち演奏家は「こう弾いたら作曲家が喜ぶ」みたいに趣向を加え弾くべきだと思う。

──コンクール向けだけでしかない演奏は、魅力に乏しい。

反田:耐えられない。譜面上では休符1拍ぶん休むべき場面を、ちょっと長めに休んだほうが効果的に聴こえる時がある。

高木:フィギュアスケートにも似た面がありますよね。型だけでなく芸術性を兼ね備えて。

反田:僕らがライブで弾き、彼らが滑ったら面白いかも。

高木:バーで飲みながら、僕ら、それこそ話していたよね。

──よく一緒に飲むのですか?

高木:強くないけど、大好きで。

反田:いやいや、強いって。

高木:浴びたいタイプ。

反田:酒席で話すのは、互いの演奏方法。どうやって弾くの? そればっかり、朝まで。

高木:延々と。

──「ピアノの森」とは?

高木:音楽初心者と専門家双方に絶妙なバランスで響く。「音楽とは?」という核心も描かれている。観客が心を動かされていく描写も丁寧で、絶対「クラシックって凄い!」ってなる。この楽しさに触れてほしい。

反田:僕自身、ピアニストという存在すら、小学生になるまで知らなかった。ピアノの魅力がいっぱいの作品。「このアニメを見てピアニストになろうと思ったんです!」って子が現れるといいな。

(構成/ライター・加賀直樹)

AERA 2018年4月16日号