また今回のNPRは北朝鮮の核、ミサイルに対抗して日本、韓国が核武装に向かうことを阻止するため、使いやすい核兵器を配備して「米国の核抑止力への信頼を確保することが核拡散の防止に有効」とも述べている。米国の「核の傘」の存在を日本、韓国、北朝鮮に目に見える形で示すには核搭載艦の公然とした寄港が必要となるはずだ。さらには横須賀を母港としている空母への核爆弾の配備や、巡洋艦、駆逐艦計11隻が搭載している「トマホーク」の一部を核付きにすることも起こりかねない。

 河野太郎外相は新NPRを「高く評価する」と表明した以上、その一環として米海軍の核搭載艦が日本の港に入ることを拒みにくい。それが北朝鮮に対する「最大限の圧力、抑止力の強化」になるとしても、抑止戦略は相手の理性的判断を前提としているから、滅亡が迫って自暴自棄になり、「死なばもろとも」の心境の相手には効果がない。その際、核搭載艦は相手にとり、まずたたきたい攻撃目標となることも計算に入れておく必要があるだろう。(軍事評論家・田岡俊次)

AERA 2018年3月5日号