一方、北朝鮮は06年10月、核実験を行い、核と弾道ミサイルの開発を進めたから、日本の右派の政治家、論客たちは、「核を積んだ米軍艦の日本への寄港を認めて抑止力とすべきだ」との「非核2.5原則論」を唱えた。

 だが、すでに米軍艦の核はほとんど撤去され、当時、核兵器を搭載していたのは戦略弾道ミサイル原潜だけだった。これらは北半球全域をミサイルの射程に入れるため、アラスカ沖の海中にほぼ2隻ずつが交代で待機していた。日本が「核搭載艦の寄港を認める」と言っても米海軍はない袖は振れないから、「2.5原則論」は軍事知識に欠けたタカ派、すなわち「バカ派」の説だった。

 ところが今回のNPRで核付きの「トマホーク」を再開発して軍艦に配備し、「使いやすい」核爆弾を空母が搭載することとなれば、核搭載艦の日本寄港には現実性が出てきた。ロシア、中国のように米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を多数持つ国に対し、もし小型の戦術核を使えば全面核戦争の扉を開きかねないから、米国も本当に使うつもりはないだろうが、まだICBMが実戦配備になっていない北朝鮮に対しては使いやすい。

 特に北朝鮮の北部山岳地帯にある谷間のトンネルに、移動式発射機に載せて隠されている弾道ミサイルを破壊するには核兵器が必要だ。地中貫通用の電柱のような形状の非核爆弾「GBU28(バンカーバスター)」(重量2.3トン、長さ5.7メートル、直径14.7センチ)は土を30メートル貫通するが、山腹のトンネルには届かない公算が大だ。無人偵察機などで出入り口が撮影できても、トンネルが地下でどちらに曲がっているかもわからない。韓国、中国などに放射性降下物が降る大威力の核爆弾は使えないから、小威力の核爆弾で数百メートルの範囲で落盤を起こすしか手がない。

 米国は戦闘機、攻撃機が投下する小型核爆弾として爆発力を火薬300トン相当から17万トン相当まで変えられる「B61核爆弾」(重量250キロ)を配備している。それを地中貫通用に改造した「B61・モード11」(同548キロ)をすでに開発しており、さらに精度が極めて高い「B61・モード12」も開発中で、これが新核戦略の目玉兵器だ。

次のページ