今回のNPRは「米国は20年以上新たな核兵器を造っておらず、核弾頭はピーク時の15%に減っている」と強調し、現在米国防予算の3%である核関連予算の割合を6.4%にすべきだとしている。軍と民間の数千人の核技術者を支える必要も説いており、彼らに仕事をつくってやりたい狙いもみえる。

 冷戦終了後、今日までの28年間に米国、ロシアの核軍縮は進み、米国は67年に核兵器3万1千発、ソ連は86年に4万5千発を持っていたが、昨年には米国が6800発、ロシアが7千発に減り、その大部分は封印保管中や解体待ちだ。配備中の戦略核弾頭は今年2月5日現在、米国が1393発、ロシアが1444発だ。米国は91年には小型の戦術核を7600発保有していたが、現在配備中の戦術核兵器は核爆弾約500発だけで、うち約200発はNATO5カ国の米空軍基地に配備され、残り約300発が米本土にある。

 米国が戦術核兵器のほとんどを廃棄したことは、通常兵器による武力紛争が全面的核戦争にエスカレートする階段を取り外した形になり、米国はじめ世界の安全に貢献した。これを行ったのはG.H.W.ブッシュ大統領(父)で、冷戦終了後の91年9月27日、「地上発射の短距離核兵器の廃棄と、海軍の戦術核兵器の艦艇からの撤去」を表明、巡航ミサイル「トマホーク」も核付きのものは陸揚げし、核弾頭は順次解体された。韓国からは同年12月までに核が完全に撤去された。これに続き、ロシアのエリツィン政権も同様な措置を表明したが徹底せず、倉庫に保管中のものも含め、1800発ほどの戦術核が残っているとみられる。

 日本では67年12月に佐藤栄作首相が国会で核を「持たず、造らず、持ち込ませず」の非核三原則を表明し、71年の沖縄返還協定調印時の衆議院での付帯決議にもこれが入って「国是」と称された。だが実際には、91年までは米軍艦が核を搭載したまま日本に寄港していた。これは、74年9月、G.R.ラロック米海軍退役少将が米議会で証言するなどで明らかだった。米側は「米国軍艦は日本領土ではないから核搭載艦が入港しても日本への核配置に当たらず、事前協議の必要はないはず」と主張し、それにも一理はあったから、日本政府は公然の秘密として黙認しつつ、国民に対しては「核を搭載した米軍艦の寄港はないはず」と虚偽の説明を続けていた。

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