画家の人生を描いた映画も増えている。現在公開中の「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」は、ポスト印象派に属するゴーギャンの物語だ。エドゥアルド・デルック監督はフランスの国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)在学中にゴーギャンのタヒチ紀行エッセーを読み、その人生に興味を持ったと話す。

「フランスでは印象派絵画は世界的に知られる“顔”。ほかの時代の画家よりもテーマとして好まれるのかもしれません」

 ほかにも印象派周辺を描いた作品には「ルノワール 陽だまりの裸婦」(12年)、「画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密」(12年)、「ターナー、光に愛を求めて」(14年)、「セザンヌと過ごした時間」(16年)、「ゴッホ 最期の手紙」(公開中)などがある。

 ただし「映画はあくまでも映画」だと、前出の中村教授は注意も促す。「例えば日本でのフェルメール人気を押し上げた映画『真珠の耳飾りの少女』(03年)。スカーレット・ヨハンソンがモデルの少女を演じ、フェルメールが彼女に思いを寄せていた、という内容ですが、フェルメールの生涯には不明な部分が多く、あの物語はフィクションです。しかし映画を観た人の多くは事実だと誤解している。映画のすべてが客観的事実ではないことを念頭に置いて楽しむほうがいい」

 虚構の妙も交えながら、アートの楽しみ方はますます広がっていきそうだ。(文中一部敬称略)(ライター・中村千晶)

AERA 2018年2月19日号