「それまで『ヤニ派』とも言われた焦げ茶色の暗い色彩の油絵と違い、影の部分に紫色を使うことから『紫派』とも呼ばれ、日本の洋画界を席巻した。これがいまの印象派人気にも続いています」(中村教授)

 それでも美術館は「印象派」人気だけに甘んじるわけにはいかない。最長待ち時間が180分と話題になった「怖い絵」展はドイツ文学者・中野京子氏の著作をもとに「怖い」というキーワードで絵画を集め、「絵を読み解く」という新しい見方を提示し、大ヒットした。さらに最近の傾向は「参加&体験型の展覧会」だと中村教授は話す。

「現在、東京・六本木の『森美術館』で開催中の『レアンドロ・エルリッヒ展』は、さまざまな仕掛けに観客が参加することで完成するアート。写真を撮り、それをSNSで拡散することも可能です。展覧会は絵を静かに鑑賞する、というものではなく『参加して楽しむ』イベントやアトラクション感覚になってきています」

 前出の山田さんも言う。

「昨年、弊館で開催した『草間彌生展』では来場者がシールを貼って水玉模様を作り上げていく参加型の作品を展示しました。最近は建築やファッションなど、絵画や彫刻以外の展覧会も好評で、美術館に行く目的や鑑賞の仕方が多様化しているのだと思います」

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