沖縄県の翁長雄志知事と政府・与党の代理戦争の様相を帯びた名護市長選。最終決戦の場は今秋に行われる沖縄県知事選になりそうだ。
まるで時計の針が逆回転したような既視感に包まれた。
2月4日に投開票された沖縄県名護市長選。米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設計画を事実上容認する前市議で新顔の渡具知武豊(とぐち・たけとよ)氏(56)=自民、公明、維新推薦=が、反対する現職の稲嶺進氏(72)=民進、共産、自由、社民、沖縄社会大衆推薦、立憲支持=を破り、初当選した。
得票数は、渡具知氏が2万389票、稲嶺氏が1万6931票。予想外の大差をつけた。
移設問題が浮上してから6度目の市長選。8年ぶりに容認派が市政奪還を決めたことで、名護市には再び手厚い国の振興策が注がれ、辺野古移設が加速するのは間違いない。
●公明・学会が動いた
その是非を問う前に、選挙戦を振り返ろう。
稲嶺氏を敗北に導いた最大要因は公明党の動向だ。前回自主投票だった公明党が渡具知氏推薦に回り、2千~2500票とされる公明党の支持母体・創価学会の票が渡具知氏に流れた、と見られている。
「翁長雄志知事を支える勢力は革新色が強すぎます。何としても今秋の知事選を制したい。今回の勝利は決定打に近いといえるでしょう」
渡具知氏勝利をこう意義づける公明党関係者は、創価学会員の引き締めだけでなく、無党派層にも浸透を図ったと明かす。
ただ、公明党沖縄県本部は辺野古移設に「反対」の立場だ。草の根の学会員に渡具知氏推薦の理解を得るには「政策協定」という切り札が必要だった。公明県本部と渡具知氏が結んだ協定には「米海兵隊の県外・国外への移転を求める」ことが盛り込まれている。同関係者は言う。
「将来的には県外・国外へという意味です。今の流れだと、どうせ辺野古に基地は造られてしまう。それなら現市長を押し上げる意味はない、と判断したのは学会員だけではないはず」