ぬまた・まなぶ/1972年、北海道生まれ。早稲田大学卒業。2003年にカメラマンとして独立。17年9月に『築地魚河岸ブルース』(東京キララ社)を出版(写真:沼田学さん提供)
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ぬまた・まなぶ/1972年、北海道生まれ。早稲田大学卒業。2003年にカメラマンとして独立。17年9月に『築地魚河岸ブルース』(東京キララ社)を出版(写真:沼田学さん提供)

 2017年9月、築地市場を扱っているのに魚が写っていないと話題になった写真集『築地魚河岸ブルース』(東京キララ社)。この写真集で主な被写体となったのが、築地市場を走り回る小さな黄色い乗り物「ターレー」とこれに乗る築地の男たちだ。カメラマン・沼田学さんに同写真集ができた経緯を聞いたみた。

【フォトギャラリー】築地を走り回る小さな乗り物 築地市場とターレー

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 築地市場で写真を撮ろうと思ったのは、知人に「一見さんお断り」の仲卸エリアを案内してもらったときの「引っかかり」がきっかけです。1カ月ほど通ったら、ターレーとその運転者が映画「マッドマックス」に出てくるいかつい男たちとブイブイ言う車みたいに見えてきて。働く人たちの存在感や表情がかっこいいと思うようになりました。

 撮影場所は、場内と場外の中間にある「海幸橋」付近。場内の撮影には申請が必要ですが、ここは公道なので自由に動ける。それに、場内と場外を行き来するターレーを1台ずつ撮影できたんです。週に3回、市場が落ち着く午前8時ごろにスタンバイして10時ごろまでシャッターを切る生活を1年間続けました。

 決まった場所での撮影ですが、服装や天候の変化でマンネリにならずに済んだ。あえてドラマチックに、ストロボを使って「非現実感」を出す工夫もしています。「撮るな!」とも言われたけど、僕にしてみればその場限りの「出会い」を撮る感覚。撮影後に、ターレーに書いてある屋号を頼りに市場内を訪ね歩いて写真を手渡したら、喜んでくれた人もいましたよ。

(編集部・小野ヒデコ)

AERA 2018年1月29日号