──下級生のころから抜擢続き。入団15年目でも、当初からの透明感は変わりません。

明日海:当初は子役や女性の役が続いて、背が高くなりたい、童顔を何とかしたい、とずっと焦っていたんです。

 自分は男役として見込みがないのかな……と悩む時期もありました。女役が続いた後、男役に復帰した時に、ファンの方から「明日海さんの男役が好きです」という言葉をいただきました。その言葉がとてもうれしく、ありがたく、そう言ってくださる方が1人でもいる限り、男役をやらせていただこう、と前を向くことができました。そこからですね、役に集中できるようになったのは。

──華やかなショーの一方で、「新源氏物語」「春の雪」といった和の芝居では、高貴な人物の屈折した心理を、美しく演じきりました。香気あふれる舞台は、まさしくトップスターならでは。

明日海:毎回、お稽古に入る前は、自分にこの役が務まるのだろうかと不安なんです。でも、実際にお稽古が始まると、どんどんのめりこんでいくタイプで。歌劇団というところは、のめりこむタイプが多い場所で、上級生の方々や、共演の仲間たちと熱中して、それが相互作用を経て、さらに深まっていく、という感じです。

──1年前の新年は「金色の砂漠」で、“砂漠の王国の姫君の奴隷”という難易度の高い役に挑戦していました。

明日海:複雑な役で、とても難しかったですね。奴隷の苦しみ、悲しさを背負いながら、なおかつタカラヅカの舞台として成立させねばならない。毎回、命をかける気持ちで取り組みました。

 どんなに経験を積んでも、舞台に上がる緊張、不安から逃れることはできません。それを乗り越えるには、一回一回の舞台で全力を尽くす以外にないと思っています。涙や汗にまみれて、ひとつの公演をやり切って、ようやく次に行ける。その繰り返しです。

(ジャーナリスト・清野由美)

AERA 2018年1月15日号より抜粋