B子さんはただ謝ることしかできなかった。その後、転居を繰り返し、姓も変えて生活しているが、常に身元がバレることを恐れている。B子さんはこう話したという。

「夫がやったことなのに、追い詰められるのは家族。子どもがかわいそう」

 阿部さんたちは電話を24時間態勢で受け付け、弁護士や臨床心理士、大学教授など専門家が支援し、当事者の集まりも各地で定期的に開いている。

 ただ、加害者家族への支援は異論もあるのも確かだ。家族を奪われ、あるいは傷つけられた被害者家族の苦しみを思えば、加害者家族の支援に否定的な意見も少なくない。この点について、刑法学者で九州工業大学の佐藤直樹名誉教授は(1)再犯防止、(2)自殺・心中の予防、(3)人権の確立。この3点から、犯罪加害者の支援は必要と説く。

「日本の社会には罪を償った加害者を受け入れる余裕がなく、社会的排除は加害者の再犯の可能性を高くし、さらに加害者家族を苦しめます。また、加害者家族は自責の念から自殺を考え、心中に追い込まれることもある。罪を犯していない家族に制裁を加える社会は、人権が確立されていない社会といえます」

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