永井:最後もそうですが、キャラクターを自由に動かしてくれているな、と感じましたね。みーこ(このアニメではミーコ)もタレちゃん(同・太郎)も原作とは違うけれど、それでも本質的なところは全然変わっていない。

湯浅:原作では最後にみんな死んでいきますが、アニメでそのまま描こうとするとすぐに終わってしまうんですね。なので、もう少しシーンを分けて描きたいなと思いました。家族の中から悪魔が出てくることはとてもつらいだろうなとか、武器を持たないと言っているお父さんが武器を持つとなると悲惨さが伝わるのかなとか考えて、こうなりました。

──実際、現代に通じるテーマですよね。

永井:今、現実はデビルマンの世界により近づいていると思いますね。45年前に、当時の学生運動や冷戦などを見ていて、権力闘争みたいなものがエスカレートすると最終的には破滅するという警鐘的な意味でデビルマンを描いたんですね。

 でもやっぱり、世界はそっちの悪い方向へ向かっているような感じがある。ネットで炎上したり、悪い言葉ばかりぶつけ合ったりしていると、本当に世界は悪い方向へ向かっていく。今回の作品を観てもそれを感じられるんじゃないでしょうか。

湯浅:SNSなどネットが普及している今は、昔よりも人々の感情が盛り上がりやすい状況になっていて、かつてよりも明確にデビルマンの世界に近くなっているなと思いますね。でも、その中で希望を描きたいと、それをテーマにしています。

永井:(今回の作品の中で)石を投げられているデビルマンに子どもたちが寄り添っていくシーンがあります。そういった和解がないと、世界は滅びてしまうというメッセージがより出ていました。そういうところが、すごくよかったです。

湯浅:今回、海外でも同時配信されます。海外の人に届けるという意識よりも、日本でおもしろいものを作ったら誰にでも受け入れてもらえるんじゃないかと思って作りました。

永井:過去にもハリウッドで映画化したいといったオファーがあったんですが、海外だと「悪魔信仰なんてとんでもない」とストップが入って何度もつぶれているんですね。宗教的に問題になるということなんですが、デビルマンは戦争や武器の発達、人間の業を表現している作品なんだと、今回の作品を観てもらってもわかると思うんです。

 人間の業というか、人間は歴史的に戦いを繰り返してきたんですね。今もこれからもそうしていこうとしている。それをいったい、いつ止めることができるのか、がデビルマンの一番の主題でした。今また危ういところまで来ているけれど、そこはとどまって平和な時代を続けてほしいという気持ちがあります。

(構成/編集部・長倉克枝)

AERA 2018年1月15日号