グーグルやフェイスブックなどが提供する無料サービスを利用し、何げなくアップした写真やコメントが実は貴重なビッグデータになる。彼らは無料でサービスを提供する代わりに、利用者のデータを取得し、新たなビッグデータビジネスを展開しようともくろんでいる。

「あなたはお客様ではなく商品である」

 これはネット上のフリーサービスを語る時の有名な言葉だ。利用者が対価を払わないですごいサービスを使っているということは、そのサービスを提供する事業者は別の部分で相応の利益を得ているということだ。

 このままいけば、日本のビッグデータを米国企業から高値で買わされる羽目になる。近い将来「日本人のDNAビッグデータが10兆円」「日本人男性の性癖ビッグデータが5兆円」といった見出しが新聞紙上をにぎわす時が来るかもしれない。

 経済活動がグローバル化している以上、多かれ少なかれ米国に持っていかれるのはやむを得ないが、せめて日本に関わるビッグデータくらいは自由に有効活用したい。日本政府は国益の観点から日本のビッグデータの収集・保管・活用を促す仕組みづくりを急ぐべきなのだ。

 例えば北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州の8地方に「ビッグデータセンター」を構築し、地域ごとにデータの収集・保管を行い、全体管理を政府が担うのはどうだろう。実際の運営は全国に通信ビルやデータセンターを保有するNTTなど民間事業者に任せるのもよい。そのビッグデータは公共財なので、しかるべき手続きを経れば、だれでも活用できる。

 こうした体制を敷くことで、日本人のためのビッグデータが実現し、国益確保のみならず、少子高齢化や労働力不足、地域の疲弊などの社会課題の解決に役立てることも可能になる。何はともあれ、ビッグデータ時代を生き抜くための戦略が必要だ。こうしている間にも日本のビッグデータは野放図に流出している。残された時間は少ない。

AERA 2017年12月11日号