小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
子どもを産み、育てやすい社会をつくることこそ政治家の務めのはず (c)朝日新聞社
子どもを産み、育てやすい社会をつくることこそ政治家の務めのはず (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【自民党の山東昭子参議院議員の写真はこちら】

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 自民党の山東昭子参議院議員の「子どもを4人以上産んだ女性を表彰することにしてはどうか」発言。「女性活躍社会で仕事をしている人が評価されるようになって、逆に主婦が評価されていないという声もあるので」という説明にドン引きです。専業主婦の評価が国の表彰? しかも4人も産まないと評価されないの?

 うがった見方をすれば「経済的に国家に貢献することができない女性は、子どもをたくさん産んで貢献せよ。働く女性が産みやすい環境がないなら働かない女性に産ませればいい」ともとれます。4人以上産んで、稼ぎ手が1人で養っていくのは大変ですよ。経済的な理由で2人目を諦める人だっているのに。家計を助けようと女性が働きに出ようにも預け先はなし、ようやく預けたところで待っているのはワンオペ育児。ただご立派ですねと表彰されてほったらかしにされるのがわかってて、一体誰が産むでしょう。何から何までトンチンカンで実に腹立たしい。

 今から12年前、次男の育児休業から復帰した時に、熟年世代の人たちから「国のためにもう1人」と言われました。3人目は考えていなかったので「いえ、打ち止めです」とか適当に答えていたら「少子化だから、産める人がたくさん産んでおかないと」と。

 私の腹は国に供出した人口増産機じゃないぞ。そして一体そう言うお前は少子化解消のために何かしているのか。他人に産め産め言うのが役に立つとでも? 子どもは数字じゃなくて、人間だよ。人ひとりをお金と手間と心をかけて自立させるのがどんだけ大変か、考えようとも助けようともせずに「産め」なんて言うな!

 あの怒りから干支が一回りしても、また同じようなことで腹を立てなくちゃならないなんて。表彰なんかじゃ、人は動かないのに。的外れなのは現場を知らないからか、それとも、そもそも個人なんて国家の部品でしかないという発想なのか。闇は深いです。

AERA 2017年12月11日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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