だがすでに日銀のETF保有残高は20兆円を突破。日本株全体の3%超に達しており、「株価形成をゆがめている」との批判は強い。日銀の自己資本(8兆円弱)の3倍近いETF保有も異常だ。一旦、株価が下落に転じれば、あっという間に債務超過に陥りかねない水準なのだ。

 さらにもう一方のクジラ買いの主役のGPIFの株式投資も限界に達しつつある。「ポートフォリオに占める国内株式の割合は9月末で24.35%、外国株式は24.03%まで上昇。内外株式の保有割合の基準は各25%で、ほぼ上限に近い」と市場関係者。要はアベノミクスを下支えした「官製相場」が終わりに近づいているのだ。

 外国人投資家の日本株買いにしても、いつまで続くか予断を許さない。世界的に株高が進む中、低金利も継続し、債券相場が堅調に推移。株高と債券高が共存する世界は一面では異常だ。グリーンスパン元FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、中央銀行が政策金利を引き上げても長期金利が低いまま続くこの現象を「コナンドラム(謎)」と呼んで懐疑した。

 先進国が低成長下にありながら株価は高騰する主因は「高圧経済」と呼ばれる過剰なまでの金融緩和にあるとされる。要は供給を上回る需要を中央銀行がマネーの供給によって人為的に作り出しているだけなのだ。

 その構図はいつ反転するのか。過剰な金融緩和の本尊、米中央銀行のFRBでは、来年2月にイエレン議長に代わり、パウエル理事が新議長に昇格する。ハト派で利上げや量的緩和の縮小に慎重とみられるパウエル氏だが、議長としての手腕は未知数だ。今年は米国の株価暴落「ブラックマンデー」からちょうど30年。もう一度言う。危機はいつも突然、訪れる。(経済ジャーナリスト・森岡英樹)

AERA 2017年11月20日号