一橋大学の清水洋教授によると、先に動いたのは大企業のほうだ。研究開発の効率を高める必要に迫られて、有望な特許を持つベンチャー企業と組む道を選ぶようになったのだ、と。「特許があれば、提携後に利用範囲などで争う危険が小さくなりますから」(清水教授)

 「輪」を作るのではなく、複数の大企業と個別につながるベンチャー企業もある。例えば、06年8月創業のラクサス・テクノロジーズ。提供するのはブランドバッグのレンタルサービスで、会員は月6800円で借り放題。16万人が登録し、平均1万3500個が貸し出されている。

 損害保険会社、小売業、服飾メーカーと強固につながったことも、このにぎわいを後押ししている。

 三井住友海上火災保険が専用保険を開発。バッグが汚れるなどして貸し出せなくなった際に購入金額を補償する。丸井はラクサスの店舗を誘致し、アダストリアは自社サイトに導いて、バッグに合う衣料品を売る。

「人は店頭で実物を見ると、いっそう借りたくなります。借りると、それに合わせる服も欲しくなる」(児玉昇司社長)

 今後は海外の大都市で展開し、各都市で会員を3万人ずつ集めたいという。(編集委員・江畠俊彦)

AERA 2017年11月13日号より抜粋