そもそも日本では、開発から治験までをトータルで手がけるVLP社のような創薬ベンチャーは珍しい。薬剤の製造ラインから治験のための施設まで、厳格な基準を満たさなければならず、ベンチャーにはハードルが高いからだ。だが、メリーランド州はそうではない。

「ここには、薬剤の製造や動物実験などを請け負ってくれる業者がたくさんいます。私たちのような小さなベンチャー企業でも、アイデアと資金があれば創薬が可能です。アメリカは日本と比べると、国の承認を得るための治験を進めやすい仕組みも整っています」(赤畑さん)

 VLP社は現在、ワクチン製剤を製造中。来年からはマラリアワクチンの人での臨床試験を始める計画だ。起業から数年でここまでこられたのは、やはりアメリカだったからだ。

 赤畑さんは続ける。

「アメリカは日本とは異なり、起業する人に敬意を払う文化があります。競争は激しくても支援の裾野が広いので、小さい会社にもチャンスがあります」

 前出のグローバルヘルス技術振興基金は国際協力の一環として海外と日本の組織の共同開発の枠組みに助成をしているが、鹿角さんによると、

「VLP社は海外企業として参加しています。同社と日本の組織との協働に助成することが、日本としてグローバルヘルスに貢献することになるという考え方です」

(編集部・長倉克枝)

AERA 2017年11月13日号