●夫を恨むくらいなら恋する 恋と家庭をマネジメント

 不倫が話題になると、「離婚してから恋愛すればいい」と言う人がいる。だが「結婚と恋愛は別」と考えている人にその意見は通らない。セックスレスや夫とのディスコミュニケーションを我慢して老後に恨みつらみを抱えて生きるくらいなら、恋に身を任せて「今」を生きるほうがいいと考える世代が現れているのだ。人は天災人災でいつ命を落とすかわからないとわれわれは身をもって経験しているのだから。

 かつて「夫は生活のパートナー、彼は人生のパートナー」と言いきった女性がいる。彼女はどちらとも別れることなく人生をまっとうすることを望んでいた。一方でもちろん、不倫の恋が終わりを迎える人もいる。

「彼が奥さんに疑われ始めたとき転勤になってしまって。潮時だろうと別れました。つらいけど、もともと私の生活になかった恋を拾っただけなのだから、あの恋は宝物にしておこうと思っています。最後から二番目の恋かもしれないし」

 2年間の不倫を終わらせたマサヨさん(49)はそう話す。どこにも迷惑をかけずに終わらせた恋は、彼女に「希望と生きる活力」を与えたという。ただ、この先も彼女は恋がやってきたら素直に落ちていくつもりがある。1度の恋で懲りるか、それを糧にしてさらに恋をするかは人それぞれ。いずれにしても、「結婚と恋愛は別」と考える人たちが増えていき、うまく恋と家庭をマネジメントすることができれば、世間の倫理観も変わっていくのかもしれない。「結婚したら身も心もひとりに縛られる」のが当たり前ではなくなっている時代が来ているのではないだろうか。(文中カタカナ名は仮名)

(ライター・亀山早苗)

AERA 2017年10月9日号