金融庁としては、金融事業者に「顧客本位の業務運営」を求め、「つみたてNISA」で対象とする商品も顧客重視で選ぶことにしています。当初は「つみたてNISA」の対象となる商品の要件が「厳しすぎる」という声もありましたが、今年7月末までに事前相談を受けた商品では120本がこれをクリアしました。昨年11月で金融庁が想定していた本数は50本でしたから、かなり増えました。

 長期投資に適した対象投資信託を少額でコツコツ積み立てることで、安定的な資産形成が期待できます。過去の実績に基づき機械的に計算すると、95年から毎年、国内・先進国・新興国の株・債券にそれぞれ6分の1ずつ投資を続けていた場合、20年後には累積リターンは79.9%にも上りました。年平均では4%の利回りとなります。定期預金では年平均0.1%ですから、効果は一目瞭然です。これを毎年ではなく毎月少額ずつ投資信託を積み立てれば、さらに投資時期が分散され、高値づかみをしないメリットは高まります。

●金融庁で率先して導入

「投資は必要だと思うが踏み切れない理由」に関するアンケートを金融庁が行ったところ、「まとまった資金がない」「どの商品がいいか分からない」「時間的ゆとりがない」といった回答が上位に並びました。少額投資や積み立て投資ができることが知られていないだけなんです。

「まず隗より始めよ」で、金融庁では率先して「職場つみたてNISA」を導入し、職員に活用してもらおうと考えています。「つみたてNISA」は初心者の方に成功体験を持っていただく、その「きっかけ」となる重要な仕組みです。金融機関にも、この趣旨の理解が進んでいると感じます。いかがですか。

(構成/編集委員・江畠俊彦)

AERA 2017年10月9日号