「衣装合わせし、髪形を決めていく段階でいろんなものが見えてきました。スーツは何十着と用意されていたんですが、1960年代のデッドストックのスーツがあって、ジムさんは最初からそれが気に入っていた。ただ、ぼくが気に入るかどうかが一番大事だから、と言ってくれて、でもぼくもそれが一番だと思い、映画で着たのはそれですね。こんなちょっとしたこだわり一つでも、『ジムさんっぽい』ってキャッチできるんです」

●独特の言い回しに注目

 永瀬さんの出演シーンでは、繰り返される独特の言い回しがあり、一瞬しか映らないが「あれっ?」と気になる体の部位がある。これは見る際にぜひ注意していただきたい。

「あの言い回し、みんなマネしてくれるんです。ジムさんはキャラクターのフックになるようなアイデアを必ず盛り込んでくれるからうれしい」

 日本公開を誰よりも楽しみにしていたのが永瀬さん自身だ。

「大きな幸福って、実は誰にでも描けると思うんです。でも、小さな幸せを積み重ねていくことがどれだけ素晴らしいか、それを緻密に描けるのはジム・ジャームッシュ監督しかいない。監督に良い報告がしたいです。ぜひ、ご覧になってください」

(ライター・北條一浩)

AERA 2017年9月4日号