新垣隆(にいがき・たかし)/桐朋学園大学音楽学部作曲科を卒業し、長く同校の非常勤講師を務める。3年半前、佐村河内守氏のゴーストライターだったことを懺悔告白(写真:本人提供)
新垣隆(にいがき・たかし)/桐朋学園大学音楽学部作曲科を卒業し、長く同校の非常勤講師を務める。3年半前、佐村河内守氏のゴーストライターだったことを懺悔告白(写真:本人提供)

 何やら聴き慣れぬ音色が近づいてくる。奏者の姿は見えない。正体は、新たな展開をみせているAI(人工知能)。人間と協調して演奏し、わずか数十秒で作曲もするとか。AERA 9月4日号ではAI時代の音楽を見通すアーティストや動きを大特集。

 将棋も囲碁もやられた。相手は“ハイテク黒船”AI(人工知能)だ。ネット上には作曲サービスも次々登場。敵か味方か。作曲家・ピアニスト新垣隆さんに話を聞いた。

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 僕ら作曲家は、コード進行などの音楽の仕組みを言葉をしゃべるような感覚で自由にコントロールできるよう訓練を積んできています。AIが作曲や演奏の分野でどこまで進化しているのかよくわかりませんが、ビッグデータを分析する作業なのでしょう。我々も、記憶として頭に蓄積してあるメロディーラインや様々なデータを、その都度選んで組み合わせている、という意味で、AIと同じですね。

 ただし、数学的に組み合わせるという感覚はない。例えば、オーケストラの演奏ならば全体のサウンドのイメージを体で受け取る。それを再現する実際の技術は勉強と現場体験の蓄積です。あとはセンスだとか、他に言いようがない。音符を置いていくのはピアノを使うことが多いです。音の構成を最も統合できる、一種の“シンセサイザー”だから便利なんです。音の積み重ねをピアノの鍵盤に転写してきたことが作曲の歴史です。

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