ここ数年、音楽業界では構造的な変化が続いている。まず挙げられるのは「音源から興行へ」という潮流だ。音楽ソフト市場は右肩下がりで減少を続け、16年に2457億円(日本レコード協会調べ)と、ピークを記録した1998年から半分以下に落ち込んだ。数年前には好転した時期もあったが、それを支えたAKB48などの特典商法や大物アーティストのベスト盤のセールス効果も薄れつつある。一方で音楽ライブ市場は活況だ。16年は3401億円(ぴあ総研調べ)と、調査を開始した00年から倍以上に拡大。すでに音楽ソフトの市場規模を追い抜いている。

 そしてもう一つが「パッケージからオンラインへ」という潮流だ。デジタル音楽配信の売り上げはここ数年で拡大。16年に529億円、前年比12%増と好調な推移を見せている。それを牽引するのがサブスクリプション(定額制)の音楽ストリーミングサービスの急成長だ。月額約1千円ほどの料金で膨大な量の楽曲がいつでも聴き放題になるというこのサービス。15年にはAppleやGoogle、LINEなど各社がサービスをスタートし、16年11月には世界最大級の音楽ストリーミングサービス「Spotify」が日本上陸を果たした。そのこともあって、16年には前年比61%増と大きく市場を拡大している。

●音楽不況は過去のもの

 海外に目を向けると、日本よりもさらに先を行く変化が起こっている。「音楽不況」という言葉はすでに過去のものとなり、音楽市場全体が再び顕著な成長を見せている。国際レコード産業連盟(IFPI)の発表によると、日本と同じく99年以降右肩下がりの推移を続けてきた世界全体の音楽市場は14年に底を打ち、15年からは拡大基調に転じた。16年の世界音楽市場は約157億ドル、前年比5.9%増となり、97年以降で最も高い伸び率を示した。

 世界の音楽市場の拡大に寄与しているのはやはりデジタル分野の成長だ。特にアメリカではその動きが目覚ましい。全米レコード協会(RIAA)の発表によると、16年のアメリカ音楽市場は77億ドル。2年連続で前年実績を上回り、16年の前年比は11.4%増と98年以来最大の伸び率を示した。その内訳を見ると、CDなどパッケージメディアの売り上げは22%。一方ストリーミングサービスの売り上げは51%と市場の大半を占めるようになっている。いまだにパッケージメディア売り上げが8割以上を占め、苦戦の続く日本の音楽市場とは対照的な数字だ。

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