満島ひかり 7テイク目までかかった永山絢斗との恋の描写

北條一浩AERA
 島の娘と特攻隊長の逢瀬──島尾ミホと島尾敏雄、夫婦にして文学者である2人の自伝的小説をベースにした映画「海辺の生と死」の公開が始まった。自身も作品の舞台となる奄美にルーツを持つ主演女優・満島ひかりさんにお話をうかがった。

 太平洋戦争末期、奄美群島・加計呂麻島。極限状態の中で出会った男と女。作家の島尾敏雄が自らの体験を元に書いた『島の果て』等の短編と、その妻で後に作家となる島尾ミホの「その夜」(短編集『海辺の生と死』に収録)など複数の作品をベースに映画「海辺の生と死」は誕生した。

「監督の越川(道夫)さんとお会いした時、満島、いくつになった?と聞かれたので、もうすぐ29ですと答えたら、『奄美、島尾ミホ、20代、海辺の……』と言い残して去って行ったんです」

 多くのインディペンデント映画をプロデュースしてきた越川氏の監督第2作だ。

「あれだけたくさんの本を読んできた越川さんが、『生涯の大切な本』だと言う作品です。私の祖母や父が奄美出身であることも知っていました。はじめて読んだミホさんの描く奄美に愛おしさや懐かしさを感じて、私の身の丈にあった作品を故郷でできることが嬉しかった」

 劇中に美しく哀しく鳴り響く島唄は、地元で“クジラの唄声”と呼ばれる奄美島唄の第一人者・朝崎郁恵さんが口伝で教授してくれた。ミホが暮らした押角集落の当時の言葉を話せる人がほとんどおらず困り果てていたところ、ミホの息子で写真家の島尾伸三さんが、自身の中に残っていた言葉の記憶を総動員して台詞をすべて読み上げてくれた。

「朝崎さんの目をじっと見て、手を握って、温度で感じる島の記憶を本当に大切に、優しく伝えてもらいました。伸三さんは、『映画に島が映るかどうかが肝心だね』とおっしゃっていて、私もそこが肝心だと思いますとお話ししました。大平トエさんという主人公は『島尾ミホさんと島』の、ふた役をやっている気持ちだったんです」

 言葉に鋭敏であること。手から伝わるその感覚。このことで印象的な出来事が二つある。言葉のほうは、満島さんが文芸誌「文學界」6月号に「いちばんだけのしりとり」と題して発表した、詩のような表現である。

 はだしで駈ける珊瑚のみち
 血の滲むすました柔らかな肌
 だんだんと原始にかえってゆく

 1行の最後の音(ち、だ、く)が次の1行の最初の音になるしりとり。これが32行続いていく。

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